世界でも最もアグレッシブにM&Aを含め事業展開を行う某企業を例に取ろう。

海外事業のような新規(モノという意味ではなく新地域という意味)事業においては大きく分けて3つの方法がある。

一つはM&Aであり、もう一つは自己投資、更に現地パートナーとの共同展開である。

この企業ではM&A専門の部隊が各事業部単位で存在する。
彼らはM&Aの対象となる企業を探し出し、分析、評価を行うプロである。

現地パートナーとの共同展開にはジョイントベンチャーや代理店等といった方法がある。
ジョイントベンチャーの場合はM&A専門の部隊も関与する。
現地パートナーを最終的に買収した場合等の分析業務も必要となるからである。


更に競合企業等の動向をベンチマークする部門がある。
この部門では業界全体の動向、競合の動向を毎日のようにアップデートしている。
私もコンサルタントとしてこのような部門の人物との情報交換は欠かさない。
この部門では、現地の有力パートナーの情報も十分に持っている。

これらのM&Aや現地企業の情報を集め、自己投資も含めた最適と思われる判断を下すのはマネージメントである。
日本語で言えば、事業部長、投資金額や場合によれば課長クラスでも判断が出来る。

M&A、ジョイントベンチャー、自己投資等の実務をサポートするには法務部門、ファイナンス部門のようなサポート部門にもそれぞれ専門家がいる。
また、グループ内にはコンサルティング企業も抱えており、これらの企業からそれぞれの地域、実務のスペシャリストを集める。

そして、実際の事業の担当者とチームを組んで業務を遂行していく。
担当者は、このような業務を通じて経験を得、さらに様々な業務スキルを獲得し、成長し給料を上げ、出世していくためのモチベーションとしていく。

こうしてみると、いかにも簡単であるが、やはり歴史と経験を経たノウハウと大企業ならではの人材が蓄積されている。

さて、中小企業はどうするか。

このような大企業の手法も考慮しながら、それぞれの企業に合った手法を開発していくことになるが、この連載のいたるところにヒントがある。
それらを理解して、強い意思を持って海外展開を進めて欲しい。