最近クロスボーダーM&Aへの注目度が上がり、弊社にも多くの問い合わせが寄せられる。
弊社では10年以上、企業のクロスボーダーM&Aの意思決定に関してサポートを行っている。
私が思うことは、クロスボーダーM&Aと日本国内でのM&Aへの取り組み方は別に考えるべきだということである。
国内でのM&Aでは、買い手側、売り手側の少なくともどちらか、多くの場合両方にその業界の知識、経営ノウハウがある。
よって、M&AアドバイザーはM&Aの交渉や業務の進行に注力することができる。
M&A後の事業計画等は買い手側が売り手側のノウハウを得て立てるべきであり、M&Aアドバイザーがその業界の深い知識を求められることはない。
クロスボーダーM&Aにおいて、特にターゲットが決まっていない場合、買い手側はM&Aによって進出しようとする業界自体をよく知らない場合が多い。
弊社では業務拡大を狙ったクロスボーダーM&Aをサポートすることもある。
この場合、買い手側は既にその対象国で事業を展開しており、多少のノウハウはあるのだが、M&Aによる事業への効果を評価するだけの知識やノウハウはない場合が多い。
また、クロスボーダーM&Aを行い対象国に新規進出を狙う場合、買い手側の市場に対する知識は非常に限られている場合が多い。
よって、クロスボーダーM&Aにおいては市場調査を行うことをお勧めしている。
市場を理解することによって、M&Aの効果を理解できるし、M&Aではなく先ずは業務提携から進めたり、直接投資の方が有利といった状況が明確になる場合も多い。
また、企業価値評価や買収後の事業計画も国内のM&Aではアドバイザーや買い手側のM&A担当者が行うが財務や税務が異なる場合、早い段階で対象国の会計専門家と話をしておく必要がある。
日本の感覚で利益やキャッシュフローを評価すると、買収後に赤字になるということも多い。
単に接待費だけを見ても、全く認められていない国もあり、日本の中小企業を買収する意識で財務評価を行うと実際には赤字ということもある。
下記のM&Aフローにおいて、上のフローは国内を表し、下のフローはクロスボーダーM&Aを表しているが、弊社のようなアドバイザーを活用して市場調査から基本合意をすすめ、デューデリジェンスは現地の専門家を主体に進めていくくのが良いと考えられる。