起業時の資本金

企業時の資本金はいくらが必要か、という質問は良く受ける。
ここでいう資本金とは、会社の定款に記載されている法定資本金ではなく、実際に事業を運営するのに必要なお金である。
基本的にビジネスプランを準備し、そこから算定するのが妥当な方法であろう。
企業によっては、既に売上が見込める顧客を準備している場合等もあり、資本金なし、という場合も多い。
また、法定資本金は少なくして個人の貯金をしばらくの運営に充てるという場合もある。

一般的なビジネスプランの指南書等を読めば、損益計算の仕方等、ある程度の想像はつく。
但し、これを海外での起業時に当てはめると、非常に厳しい場合が多い。
特に数百万円以下で起業しようとする人は注意が必要である。

海外への渡航費、自宅を借りるまでのホテル代、自宅を借りる場合の手数料等、見込んでいない費用が大きな負担となる。
これで既に計画が狂ってしまい、直ぐに挫折という場合も良くある。

更に、新規顧客を開拓する場合、ある程度の時間を見ておく必要がある。
やはり慣れない土地で提供する製品やサービスを効率よく販売するのには時間がかかる。
この時間をしっかり算定しておかないと、売上が上がらない焦りが悪循環を生む。

起業は怖いものである。
この怖さが、起業家を成長させるのもまた事実である。

但し、あまりにも無理な計画は検討する必要があるだろう。
当人には自分の気持ちの強さに隠されて無理な計画だと分からない場合が多い。

海外で、第一歩の起業を行う場合、我々のような専門家に相談してみるのが良いであろう。



サービス業におけるもう一歩をどうひきだすか

サービス業を提供していくと、更に良いサービスを提供していけばいくほどクライアントの要求が厳しくなってくる。

世界一のサービスの提供を目指しているときに、かつ順調に売上が上がっているときにどう対応するか。


A 26. 常に成長

企業を経営して行く場合、常に成長していくことを考える。
売上、利益、従業員の質、 製品の質、サービスの質、企業ブランド等の向上を目指して常に努力していく。

これらの全てが達成されなくても、1つを犠牲にすれば長期的に全体が成長するということで、一風変わった戦略を取ることもある。
企業の成長は人生と同じで、常に色々な側面から成長しながら前に進んでいくのである。

海外進出においては、この中で売上が一辺倒に重要視されている場合が多い。
また、売上以外に効果を測定するのが難しいというのも事実であり、それが多くの中小企業の海外進出を難しいものにしているのも事実である。

このコラムは、海外進出を通じて、企業が成長していくことを念頭において執筆されている。
かわいい子には旅をさせろ、という諺があるが、まさにそれである。
かわいい子にはなぜ旅をさせるのか、旅をさせることで様々な経験をし、成長していくことでその子が幸せな人生を送れることを願っているからであろう。
その子が幸せになるのには、お金が全てではない。
様々な側面から幸せを理解するべきである。

海外進出という経験を経て、企業、従業員が幸せになれるように、更には、企業にとって幸せになるということは利益を生み出すことであり、海外進出という経験が利益を生み出す要因となるように、このコラムが役に立てば幸いである。


C 24. 情熱

仕事で成功するには情熱が大切である。

情熱とは何であろう。

この仕事が好き、ということであろうか。

私は本当の情熱とは一つのことから逃げずに正面からぶつかり、努力を重ねて初めて感じられることだと思う。

好き、と情熱は違うのである。

好き、はあくまで個人の問題であり、あなたが今やっている仕事が好きであろうが嫌いであろうが関係ない。

責任、困難を乗り越えて、それでも前に進もうとする強い気持ちが沸きあがてくることがあるが、これが情熱であろう。

情熱を感じられた時に、初めて海外展開においても成功が見えてくるのだと思う。

逆に言えば、情熱を感じるまでは、海外展開も成功しないということである。


D 23. 成長

弊社のような厳しいコンサルティング業務をこなす企業にとって、仕事を通じて人が成長する要因とはなんであろう。

私はこのように定義する。

仕事への好感 x 仕事への情熱 x 恐怖感 x 欲望

好感
やはり、その仕事が根っから嫌いということではなかなか前に向いて進めない。
ある程度、好感くらいは感じる仕事に着く必要がある。
ただし、状況などから好感を持てない仕事に一生懸命取り組み、長期間かけてそれが情熱へ変化した人も多くいる。

情熱
仕事への情熱は別の章で述べるが、情熱を持てるようになるには様々な困難を乗り越えなければならない。
情熱を持てるところまで来ることだけでも大変なのである。

恐怖感
顧客の期待を裏切る恐怖感、同僚の期待を裏切る恐怖感、関連業者の期待を裏切る恐怖感、仕事がなくなってしまうという恐怖感、給料が減ってしまうという恐怖感、解雇になるという恐怖感、支払いが出来ないという恐怖感、会社が倒産するという恐怖感等、これらの恐怖感も人が成長していくうえで重要である。

欲望
アメリカの心理学者であるMaslowによると、人間の欲は以下の順番で更に上位にある欲を求めていくという。

生理的欲求→安全への欲求→社会的欲求→自我欲求→自己実現欲求

この理論が正しいかどうかは別として、人が仕事をするのに持っている欲求は以下のようなものがあるだろう。

社会に貢献したい
周りに認められたい
良い仕事がしたい
面白い仕事がしたい
出世したい
金銭を稼ぎたい

これらの欲をバランスよく持つことも大切である。
成長していくに伴って、自分自身の活動がどのような欲から発せられているのかを考えていくのも良いであろう。
我々のようなコンサルタントは常にどのような欲が根底にあるのかを考えながら重要な交渉に臨んでいる。

特に最近感じることは、日本のように、社会が豊かになるにしたがって、人を成長させる重要な要因となる恐怖感が減っているように感じる。
私はコンサルタントとして独立してから、ここまで来るのに最も重要だったものは恐怖感だったと感じる。
また20代は欲望が一番大きく、30代後半くらいから情熱を感じられるようになってきた。
今後はこれらの割合がどのようになるか、正直自分でも分からない。

この記事を通じて、皆さんが仕事を通じての成長ということを考えるきっかけになれば幸いである。




E 22. 人材

企業に貢献できる人材とは何か。

いくつかの切り口でその能力を測定できるであろう。

能力には技術がある。
設計技術者であれば、設計する技術、財務担当者であれば財務諸表を準備する能力と様々なものがあるが、これらは経験と理論を重ねることで能力が上がってくる。

忘れてはならないことは、その人の性格や態度によって、その能力がどう使われどのような結果を生むかが大きく変わることである。

よって、人材度は以下のように評価することが大事である。

能力=スキル x 人間性




現在の企業の多くは、主にスキルによる会社への貢献度を元に人材の評価を行っている。
また、人間性の評価は難しく、更に人間的に成長していることを評価することも難しい。
また、人間的に成長しているということ自体の定義が難しい。

この連載では、人間性を性格や態度といった角度で測定していく。
但し、測定する手法は人間性とは直接関係性のないような項目となっている。

海外事業を通じて、従業員のスキルが伸び、人間性も成長し、会社のみならず社会や家庭に貢献できる人材を作り上げていくことが大切である。


M 14. 大企業の海外展開の進め方

世界でも最もアグレッシブにM&Aを含め事業展開を行う某企業を例に取ろう。

海外事業のような新規(モノという意味ではなく新地域という意味)事業においては大きく分けて3つの方法がある。

一つはM&Aであり、もう一つは自己投資、更に現地パートナーとの共同展開である。

この企業ではM&A専門の部隊が各事業部単位で存在する。
彼らはM&Aの対象となる企業を探し出し、分析、評価を行うプロである。

現地パートナーとの共同展開にはジョイントベンチャーや代理店等といった方法がある。
ジョイントベンチャーの場合はM&A専門の部隊も関与する。
現地パートナーを最終的に買収した場合等の分析業務も必要となるからである。


更に競合企業等の動向をベンチマークする部門がある。
この部門では業界全体の動向、競合の動向を毎日のようにアップデートしている。
私もコンサルタントとしてこのような部門の人物との情報交換は欠かさない。
この部門では、現地の有力パートナーの情報も十分に持っている。

これらのM&Aや現地企業の情報を集め、自己投資も含めた最適と思われる判断を下すのはマネージメントである。
日本語で言えば、事業部長、投資金額や場合によれば課長クラスでも判断が出来る。

M&A、ジョイントベンチャー、自己投資等の実務をサポートするには法務部門、ファイナンス部門のようなサポート部門にもそれぞれ専門家がいる。
また、グループ内にはコンサルティング企業も抱えており、これらの企業からそれぞれの地域、実務のスペシャリストを集める。

そして、実際の事業の担当者とチームを組んで業務を遂行していく。
担当者は、このような業務を通じて経験を得、さらに様々な業務スキルを獲得し、成長し給料を上げ、出世していくためのモチベーションとしていく。

こうしてみると、いかにも簡単であるが、やはり歴史と経験を経たノウハウと大企業ならではの人材が蓄積されている。

さて、中小企業はどうするか。

このような大企業の手法も考慮しながら、それぞれの企業に合った手法を開発していくことになるが、この連載のいたるところにヒントがある。
それらを理解して、強い意思を持って海外展開を進めて欲しい。





P 11. 大企業の経営インパクト

なぜ大企業は企業体力があるといわれるのか。
簡単にいうと、人が多いからである。
もう少し条件を付けると利益に貢献する人が多いからである。

大企業の管理には良くプロフィットセンター、コストセンターという言葉が良く用いられる。
プロフィットセンターとはいわゆる利益を生み出す部門であり、営業部門がまさにこれにあたる。
コストセンターとはその部門自体は直接利益を生み出さない、また利益を生み出すために費用のみを使う部門である。
例えば、経営企画部門等はまさにこのような部門の代表例であろう。

営業部門でバリバリ売上を上げている人達が、あいつらなにやってんだ?というのをよく聞かれると思いますが、その場合、大体このようなプロフィットセンターを指しています。

コストセンターはプロフィットセンターが効率よく利益を生み出すために必要な部門とされていますが、どれだけ有効に貢献しているかを上手に管理している企業はそう多くないと思います。

さて、話は戻りますが、例えば、社長1人で運営するサービスを提供する企業(我々のようなコンサルティング企業にはそのような企業も多いです)の売上は多くて数千万、たとえば3千万円としよう。
利益率は30%として、約300万円である
1,000人の会社が1人あたり1万円の利益を稼いだとするとそれだけで1千万円。
比較すると簡単に理解できる

このように大勢で稼いできた利益を蓄積した大企業には、新規事業にかけるお金がある。
また、お金をかける経営に慣れてきた管理職は、ある程度大胆に意思決定ができ、それなりに責任も与えられる。
事業計画を練るノウハウも持っており、それを遂行させる管理能力も備えている。

人をうまく使って、利益を生み出し、さらなる好循環を作り出したうえで、新しい事業の計画を立てそこに投資していくというモデルは大企業の体力があって出来るものであり、大きな規模の中で成功する事業、失敗する事業のリスクバランスをとっていくことが出来る。

1つの新規事業の経営に対するインパクトは、全体の中で捉えることができ、最適化していくことができる。

1つの新規議場が次の経営に大きなインパクトを与える中小企業とは大きく違うことを経営者は理解して海外進出などに取り組むべきである。

中小企業の経営インパクトに関しては、別の章で詳しく述べる。




S 8. 大企業の評価

大企業の評価は明確である。

先ず上場企業であれば株価である。
更に、財務諸表を読めば経営層が何によって評価されるかが分かる場合が多い。
特に海外企業の場合、経営層の評価基準は非常に明確になっている場合が多い。

例えば、最も簡単な評価測定には以下のようなものがある。
  • 株価上昇
  • 売上増加
  • 利益率増加

このような測定される値を上昇させるために経営層は様々な手法を用い、日々努力している。

明確であるがゆえに起きる問題もある。

測定値は少なくとも1年、通常もっと長い期間で一定であり、市場バランスが崩れて緊急的な決断を迫られても、あくまで測定値に沿った判断がなされる場合が多い。
また、全ての小さな事項を測定するのは不可能であり、全体を最適化させるための目標となっており、長期的に利益を生み出すビジネス、小さな市場であるが高い利益率を生み出すビジネスは重要視されない。

中小企業の経営者で、大企業と同じ市場で戦う場合はこれらの評価基準を良く理解しておくことが大切である。

同じことをやっても、人数(人材ではない)や資金の豊富な大企業に勝てる可能性は低いのである。


経営者の立場から (中小企業における海上と日本の差)

海上と日本の中小企業の経営者を比較した場合、最も大きな違いの差は仕事から頭を離すことができるかどうかである。

日本以外の経営者は仕事を考えずに休みを取ることが出来る。
いい仕事をするために仕事を完全に忘れて休みを取ることが必要で、それにより更に仕事の効率が上がるという。
私にはそれは出来ない。
どんなに休みを取っても、24時間仕事のことを考えている。

私はバブル時期に学生時代を過ごした。
最も影響を受けた1人であり、当初仕事に追われない人生を実践し、誰よりも楽しく稼いで人生を送ることを誓ったものである。

結婚しイタリアでMBAを学んでいた1年目の夏である。
イタリアは長期的な夏季休暇を取る国として有名である。
6月にはいると皆バカンスの話しかしない。
バカンス前で疲れているという。
休みのない生活を送ってきた私にとってそれはバカげた話であった。
普通の日本人より長い夏休みをもらった上でなぜ疲れているのか、人間は堕落すれば堕落するものだと軽蔑の目で同僚を見たものです。
ところがその次の年になって一番休みが欲しかったのは私でした。
他人ではなく自分として、人間は堕落すれば堕落するものだとあらためて感じたのでした。

当時読んだ本に松下幸之助氏のものがありましたがその中で会社のことをずっと考えているという文章に出会った時にこのようになりたくないという気持と自分自身の堕落にあきれた気持ちで複雑でした。

今は仕事から頭を離すことができない自分を宿命と思い、そうなることができた自分を幸せと思います。

この連載を読む人達は、同じことを感じている、そう感じ初めて悩んでいるといった人達だと思います。

仕事から頭が話せない日本人としての宿命を受け入れ、人生を磨き続けることで海外の人達とも本当に分かり合えるビジネスを展開することが出来ると思います。